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平井玄

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一人にひとつ「街」がある――テント劇と音楽、あるいは未知のアジア都市論へ

自由芸術大学は平井玄の企み〈地下大学〉から派生しました。2020年第一弾レクチャーは地下大学+自由芸術大学として、野戦之月の桜井大造さんと平井玄さんのトークを行います。司会は野戦之月にも参加する丸川哲史さん。2014年以来の地下大学をお楽しみください。

桜井大造(野戦之月)×平井玄(地下大学)

司 会:丸川哲史(明治大学)
日 時:2020年1月18日(土)19:00~21:00
場 所:素人の乱 12号店
杉並区高円寺北3丁目8-12 フデノビル2F 奥の部屋
参加費:500円+ワンドリンク
チラシダウンロード

テント劇団「野戦之月」で演出を手がけて来た桜井大造氏と、社会運動の現場と(音楽)批評の言葉を繋げて来た平井玄氏の対談です。当時会場では、これまでの「野戦之月」の活動を記録した映像も流す予定です。企画のポイントとなるのは、私たちにとっての「街」をどのように「記憶」と「想像力」によって取り戻すか、ということです。しかしそれも、会場の空気によって思わぬ方向に膨らんだり、また鋭く結晶することにもなるでしょう。

桜井大造:1970年代前半から旅するテント劇とテント場つくりを開始、伝説的存在である「曲馬舘」、「風の旅団」の中心メンバーとして行動。1990年代中期からは「野戦之月」のテント劇を開始。この15年は、東京の『野戦之月』、台北の『海筆子』、北京の『流火』、済州島の『クロムビの月』の4つのテント芝居場にて活動中。
平井 玄:1952年、新宿2丁目生まれ。80年代からジャズを中心とする音楽の批評やプロデュースをはじめ、映画『山谷やられたらやりかえせ』やパレスチナ音楽の紹介、フリーター運動など、様々な社会運動に携わる。早稲田大学文学部、東京藝術大学の非常勤講師等も務めた。
丸川哲史:2007年一橋大学大学院言語社会研究科にて博士号(学術)取得。現在、明治大学政治経済学部教授、同大学大学院教養デザイン研究科兼任。専攻は東アジア文化論。

倫敦暴動 calling

────ギャングスター文化と反人種主義運動

毛利嘉孝+平井玄+二木信

反原発運動の胎動は、蛇行する世界のうねりの中で起きている。

9月11日の脱原発新宿デモでは、12人もの友人たちが逮捕され自由を奪われた。
東口広場は真っ白い金属ボードで覆われ、べビーカーに赤ちゃんを乗せた
お母さんたちは警官から罵声を浴びて追い払われてしまったのである。
この当局の対応に何か異常に過敏なものを感じないか?
彼らはいったい何を恐れているのか。

カイロからアテネへ、バルセロナからロンドンへと
広がった「都市の爆発」の現場では何が起きているのか?
マーク・ダガンが殺され暴動が起きるきっかけとなった街トッテンナムや、
3人のイスラム系が殺されたバーミンガムを歩いてきた毛利嘉孝さんと話し合いたい。
そして、ロンドンの街路がどこに繋がっているのかを考えよう。

【日時】9月27日(火)19時~21時
【場所】素人の乱12号店・きたなかホール(高円寺)
杉並区高円寺北3丁目8-12 フデノビル2F 奥の部屋
(北中通り沿いアヤマ接骨院脇の階段を昇って奥)
http://trio4.nobody.jp/keita/shop/12/map.html
【料金】資料代500円+投げ銭(自由意思)

ついに帰ってきた〈黒いアテナ〉───その思想史的地殻変動

◉再開「地下大学」への招待
「徹底討議 地下の中東」
4月講義@素人の乱12号店
4月28日 19時から
資料代500円+投げ銭

佐々木中さんへの手紙───エッセイ風の導入として
平井玄

私が佐々木中さんの言葉に初めて触れたのは、酒井隆史くんたちのVOL Collectiveによる『lexicon』(2009年、以文社)として編まれたキーワード集の中で、「フーコーとイラン革命」について書かれた項目でした。

他のメンバーたちのほとんどは街頭や研究会で顔を合わせている人たちばかり。ところがこの見知らぬ人物は、「現代思想系」とまるでひとつのマーケットのように呼び倣わされる場所ではまず語られることのない「イスラーム」について書いている。しかもその言葉は、短いながら極めて印象深いある種の「くぐもり」と「翳り」を濃厚に帯びていました。

フーコーが1980年に書いた「イラン・イスラーム革命」への詩的な讃美ともとれる論考が生涯の汚点のように語られてしまう。さらに末期の病床で「ヨーロッパ」に回帰し「自己への配慮」というギリシア的な境地に到達したとされる。そうした教科書的な語り方への激しい苛立ちが文面に沸き立っている。加えて「イスラーム」や「宗教」への何か独特の視線。「革命」という言葉がまるで漆黒の夜空に瞬くような文章でした。確かに、今やそうした哲学者たちの幾人かはそれこそ高校「倫理」のテクストで取り上げられている。VOLのグロサリー(用語集)そのものがそうした安全化への抵抗に違いないでしょう。その中でも、関節が外れたような独異なリズムを持つ矢部史郎のそれとは別の意味ではっきりと記憶に残っている。ページから弾け出るような不穏を秘めた文章でした。

「これを書いたのは誰だ?」
それより前の2008年に出版されていた『夜戦と永遠』を手にしたのはこのもう少し後です。そして未だに読み続けている。簡単には消化しない。消化などできない異物というべきです。そういう遠くから鈍く響きわたるものへの愛好が間違いなく私にはある。

そのうちに『切りとれ、あの祈る手を』(河出書房新社、2010年)が現れる。それらに読み耽り、また訥々と読み留まるうちに、「これは啓典の語りに似ているな」という思いを抱きました。モーセ五書をはじめ中央アジアから東地中海域にかけての宏大な空間から蝟集してきた「旧約」と名づけられた古叢書群、ナザレからやって来た私生児イエスの言行録の数々、そしてメッカに生まれメッカと対立したムハンマドの「クルアーン」として読み謳われる啓示集。そのハードボイルドな語りに似た口吻が聴き取れる。預言者たちを私たちの元に引き寄せるために「ハードボイルド」という言い方を敢えて選びましょう。

それらは「宗教」ではない。死地に直面した人々を励起させる言葉の群がりというべきです。そして人間の歴史に大きな「信」を問いかける言葉はいつも底深い「静けさ」を湛えている。その意味でそれは「革・命」の言葉なのです。生きようとする者たちの命を革める、天地と人との盟約を大きく革める言葉。「革命」という言葉の解釈権をマルクスの後継者たちが独占していた20世紀は無惨な形で終わったというべきでしょう。しかしそれは広告のレトリックではない。全世界で多くの者たちがその実現に生涯のすべてを賭けたこの言葉を、より宏大な人類史の中で再定義すべき時が来ているのは間違いないのです。

この著者は、そうした「革命」の思想史の一端として「現代思想」なる奇妙な名を冠された哲学者たちの仕事を読み継ごうとしている。だからラカンの破綻を、ルジャンドルの疎隔を、フーコーの蹉跌を大胆に語ることになるのでしょう。ドゥルーズ/ガタリが歩んだ屈曲の理路もその視野に入ってくる。そうである以上、読み解きの視野はフランスや西欧世界に留まるものではない。まさにこの点に、この帝都の最も猥雑なる街のひとつでそれと知らずにアジア諸民族の混濁の中で生きた、たった半径1キロの視野しかない私のような人間がゆっくりと反応したのです。

───今「事態」は私たちの前にある。遠くマグレブからマシュリクへと響きわたっていく「タハリール!」(解放)の轟き、さらに私たちを呑み込もうとしている地塊の震えと原子の狂乱、このふたつの波動が交錯する場所で私たちは暮らしているのです。大群衆の広場から、汚染された村から「言葉」の気配が伝わってくる。「文学」が必要とされる秋(とき)が来ている。こうした「事態」の中で共に語り合いたいと思っています。                            
                          
(2011年4月23日)

徹底討議「地下の中東 」3・4・5月連続講義

◉再開「地下大学」への招待
「徹底討議 地下の中東」
───3・4・5月連続講義@素人の乱12号店
資料代500円+投げ銭

1)3月25日 20時から
「レヴォリューション・ナウ!───千のタハリールへ」
イルコモンズ(文化人類学、映像アクティヴィスト)+木下ちがや(政治学)

2)4月28日 19時から
「ついに帰ってきた〈黒いアテネ〉───その思想史的地殻変動」
佐々木中(理論宗教学、小説家)+平井玄(半径1キロの思想家)         

3)5月28日 15時から 
「タハリール広場からアズハル大学まで───エジプトの人びと」
山本薫(アラブ文学)+本山謙二(南島史、音楽論) 

▶お立ち会いの皆さま、お久しぶりです。

「非正規労働者のための、非正規教員による、非正規大学──地下大学」を再開します。

西山雄二さんを呼んで映像『哲学への権利』を観る会を催したのが2010年の1月、その前ブランクの多い半年も含めて既に2年近く経っています。失職、移動、病気、雇い止め、とプレカリアな人間たちに相応しい非恒常性ですが、再びこうした「アンダーグラウンドな学び」の場が必要な時が来ました。

フリーター運動やオルター・グローバル運動が停滞し、喧しいストリート右翼が現れたこの2年間が「民主党時代」だったのは偶然ではないでしょう。菅直人は「小泉化」したというより、アメリカ戦争追従+新自由主義の遅すぎた「トニー・ブレア化」した。温いNPO型新福祉+ソフト・ネオリベによるギデンス的「第三の道」が有効に見えた時は完全に過ぎたということです。オバマも同じこと。こうして全世界でnext movementが模索されている中に私たちはいます。

チュニジアやエジプトに始まる「アラブ大騒乱」もそのひとつの反応でしょう。もちろんアメリカの操作はある。インテリジェンス機関は「反グロ」の10年間から多くを学んでいる。「富裕なカイロ・アメリカン大学生による欧米志向の運動で、ナセル以来のアラブ主義に対する世代間闘争」という報告もある。しかし、それだけでタハリール広場に100万人も人びとが集まるというのか?

たしかにこういう動きを、表面的なアラブ主義やイスラム主義で説明するのはもはや月並みなクリシェです。だが事実としてチュニジアやエジプトこそ、この地域における新自由主義のモデル国家とされたのがこの10年でした。石油資本とIT資本の諍いを超えて、その底流にオルター・グローバル運動への応答が潜んでいるのは間違いありません。

それとともにマーティン・バナールのいう「黒いアテネ」が逆流してきたのではないか。西欧精神の起源とされるギリシアの社会を造り出したのは、北アフリカやアラブに囲まれたレバント(東地中海圏)だったと捉える思想地理の書き換えの中から、こうした変動を見つめる必要がある。

アラブ、アフリカ、ヨーロッパ、アジアという分割を超える思想史的な含意とオルター・グローバル運動、その両者の絡み合いの中から考えようという3回連続討議です。吉野家の牛鍋丼は280円、地下大学は500円。ワンコインで、大きく深く抉り出す思考と運動が緊急に要請されているのは間違いないでしょう。

ドキュメンタリー「哲学への権利 国際哲学コレージュの軌跡」を観て

── 大学の外/哲学の地下
・西山雄二(監督 / 哲学)平井玄(音楽批評)、白石嘉治(上智大学)
・1月25日(月)上映=19:00~20:35 / 討論=20:45~22:00
・高円寺・素人の乱12号店・北中ホール (地図
・資料代500円+出来れば投げ銭

映画『哲学への権利』公式HP ⇒
http://rightphilo.blog112.fc2.com/

1983年、ジャック・デリダらが脱構築の論理をもとにパリに創設した半官半民の独創的な研究教育機関「国際哲学コレージュ」をめぐる初のドキュメンタリー映画。収益性や効率性が追求される現在のグローバル資本主義下において、哲学や文学、芸術などの人文学的なものの可能性をいかなる現場として構想し実践すればよいのか。監督・西山雄二が歴代の議長を含む関係者7名へのインタヴューを通じて、大学、人文学、哲学の現在形と未来形を描き出す。

国際哲学コレージュが受け入れてきた数々の革新は、根底的に変容しつつある世界へと思考をたえず開いてきた。この意味で、映画『哲学への権利』は「世界を変化させる」作業に対するきわめて貴重な貢献である。こうした変化の端緒が開けるのは、「世界」が意味するものの「解釈」を通じて、つまり、「国際」や「哲学」が意味するものの解釈を通じてなのだから。──ジャン=リュック・ナンシー

多種多様な角度からの鑑賞が要求される、哲学に関するたぐい稀な映画。私たちは、現代哲学が引き受けるべき責務を、西洋と非西洋という言説を乗り越えた世界を体現するという現代哲学の責任をたしかに思い出す。──酒井直樹

映画『哲学への権利』は過去の映画ではない。現在の世界における哲学の状況を問いながら、本作品が描き出すさまざまな方向性は、まちがいなく、未来の思考にとっての重大な指針となるだろう。──カトリーヌ・マラブー

[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=nW5F2Mfz5lk[/youtube]

出演:ミシェル・ドゥギー、フランソワ・ヌーデルマン、ブリュノ・クレマン、カトリーヌ・マラブー、フランシスコ・ナイシュタット、ジゼル・ベルクマン、ボヤン・マンチェフ 
音楽:matryoshka (Novel Sounds)
監督:西山雄二
特別協力:国際哲学コレージュ
助成:文部科学省研究費補助金若手B課題番号20720002
後援:東京大学グローバルCOE「共生のための国際哲学教育研究センター(UTCP)」
上映時間:93分 フランス語(日本語字幕付)

谷川雁と竹中労

───〈うた〉は殲滅されたのか?「日本の歌」から「日本禁歌集」へ

神谷一義(off noteレーベル主宰)+平井玄+本山謙二

・6月29日 19~21時
・素人の乱12号店・高円寺北中ホール
・資料代500円+投げ銭(自由意思)

「動乱の詩人」谷川雁が、筑豊の坑底に逆巻く粉塵のように甦ろうとしている。
『谷川雁セレクション』(日本経済評論社)が刊行され、道の手帖『谷川雁』(河出書房新社)が刊行された。
そして歌に執心したもう一人の動乱思想家、竹中労による1969年の録音記録集「日本禁歌集」全5巻(off note)も復刻されている。
  
「ある時ある場所で、私たちの皮膚を全開放する肉声」(雁)は、一体、いつどのようにして殲滅されたのか?
私たちは今こそ「動乱の歌」を必要としている。

『日本禁歌集ブックレット』の刊行を機に、鎮圧され埋葬された歌声を聴きながら、1960年の谷川雁による「日本の歌」論から、60~70年代の竹中による禁歌から琉歌への運動までを、off noteレーベルを主宰する神谷一義とともに語り合いたい。

地下大学東京─秋葉原で起きたこと

6月8日の白昼、秋葉原中央通りの路上ではいったい何が起きたのか?
120秒の間に、残酷な形で交錯したものは何だったのか?

青森に生まれ、各地の派遣「飯場」を転々とした末に、静岡からあの街に現れたKは、
ちょうど40年前に4人を射殺し、遂に刑死したNを呼び戻した。
彼の『無知の涙』が読まれているという。

「あの場所」は、なぜ2キロ西にある水道橋・トヨタ東京本社ではなかったのか?
あるいは3キロ南の丸の内・三菱村でも、5キロ西の新宿・東京都庁でもなかったのか?

大阪では、野宿する人たちや日雇い労働者への不当な逮捕が相次ぐ中、
釜が崎で警察との小競り合いが続いている。
90年前、富山の港町・魚津で女たちが生きるために米倉庫を襲ったのは暑い7月である。その闘いは「米騒動」と呼ばれた。

そして命を落とした人たちの一人、東京芸術大学の女子学生は、3月に行われた
ネグリ招聘(未遂)イベントを知っていただろう。

──あの場所にやって来たKと、そこで殺された人々に
集中したあらゆる動線と、そこから伸びていくものについて
徹底討論したい。
(さらに…)

RAP/TAZとしての【地下大学】

6月7日 (土)一発目の地下講義は、【地下大学】のためのRAP/TAZ(講師:平井玄)@素人の乱12号店
内容は、一回目ということで、<地下大学宣言>でした。発破としての宣言、そして、掘削の始まりです。

なぜ「地下大学」か? ─── 騒動学序説
野坂昭如『騒動師たち』を読む。(平井玄)

(さらに…)